私たちの取組み
ご法話
子どもへのメッセージ「おばあちゃんの笑顔」
大原瑞雲
2025/01/21

私はお寺の住職ですが、保育園(現在はこども園)の園長でもあります。園児たちによく「いのちの大切さ」についてお話をします。そして「私のいのちが大切だとわかったら、他のいのちも大切にしようね。わかった人!」「は~い」と、子どもたちは元気よく手を上げ、素直にお話を聞いてくれます。ただ、子どもたちの凄さはここからです。「そうなんだ!」と、うなずけると、今度はそのことを実践してくれるのです。
ある時、このような投稿記事が地元の地方新聞に掲載されました。
〈夕方、お米を取りに外の倉庫に行こうとすると、4歳の孫娘が一緒についてきました。戸を開け、電気のスイッチを入れたとたんに、ネズミが足元を通り過ぎました。あわてて、家にいるおじいちゃんに向かって「じいちゃん、じいちゃん、倉庫にネズミがおるで、早よ、始末しちょくれ!」すると家から「わかった!そりゃ、早よ、始末せにゃ!」と言う返事が返ってきました。ところが、その会話を聞いていた孫娘が「ばあちゃん、ネズミさんにもいのちがあるんでなぁ~」と...。私は驚きました。と共に、孫娘から忘れてしまっていた何か大切なことを教えてもらったような気がして、ほのぼのとした気持ちになりました〉
いのちは大切だといいながら、私たちはもしかしたら、このいのちはどうなってもかまわないいのち、これは大切ないのち、と、どこかで線引きをしているのではないでしょうか。どうなってもよいいのちなどひとつもなく、どのいのちもかけがえのないいのちに違いはないはずです。お孫さんは、もしかしたら始末されるかもわからない現実を目の前にしながら、ネズミさんのいのちの痛みに共感したのでしょう。そのお孫さんの心根に、おばあちゃんはネズミが害獣だと言われていることも知ったうえで、共感したのですね。しかも、そんなお孫さんのやさしさがうれしくって、自然と笑顔がこぼれたのでしょう。